◆≪最大成果を宣言≫ ちょっと頑張ろう 2460号   2016/6/2 木曜日

≪人材育成――職場は実験道場≫

人が、優れた人材に育っていくには、たくさんの関わりができていく。
師として関わる者がいるし、職場であれこれと面倒を見る者もいる。
何よりも役立つのは、仕事そのものである。
仕事があり、上司がおり、顧客がいて、周りの人たちの評価がある。
これらがすべて重なりあって人材へと進めていく。

OffJTで学ぶ事柄は、知識、技術の導入だけであり、大した役には立たないだろう。
職場に戻って、OJTと称する形に組み込まれた方が効果を発揮する。
もっとも、知識導入のみ場合、OJTに組み込まれず、放置される場合が多い。
およそ、知識供与のOffJT終了後、2週間から3週間ほどで忘れられる。
知識供与の研修が役立たないとの認識が広がっているのが現実だろう。

大半の職場で方法のみの伝達がOJTとして組み込まれている。
方法を会得すれば、OJTは終了する。
OJTは終わったかもしれないが、過去を少し振り返っただけに過ぎない。

OJTが方法の伝達で満足してしまう原因は、1900年当初に遡る。
フレデリックテイラーが「科学的管理法」を世に出し、生産の効率に努めた。
テイラーは、科学的管理法を広めるために、コンサルティングの言葉を使った。
現在のコンサルティングは、ここから始まる。

テイラーシステムが考案され、広く世界に広がり、間違いなく生産効率が高められた。
1900年当時は、肉体労働を主体であった。
仕事の手順、労働の手順を細分化し、無駄をなくし、道具を効率的な形に変えた。
まだ、大学卒が企業に就職する前だった。
知識が生産に関わっていなかった。
もちろん、大卒が企業に迎えられていなかったのではない。
数えられるほどの人数だった。
二つの世界大戦中に、生産革命が起こり、知識が技術に影響し、知識の重要度が高まった。
OffJTが徐々に企業に組み込まれていった。

しかし、OJTの方法は、テイラーが作り出したシステムの域から未だに逃れていない。
つまり、方法としての伝達しか実施されていない。
再度述べるが、これでは過去を踏襲したに過ぎない。

大卒が多く企業に採用されるようになって、知識が企業成果を支えるようになった。
知識が技術を作りだすようになり、
技術だけの伝達だけでなく、知識、論理を伝達する。
OffJTの必要性が明確になってきたのだ。

だが、知識導入が、仕事の現場でOffJTを支援しているとは言えない。

知識は、未来を創り出そうとする。
知識が、現在の問題を鮮明させ、解決するだけでなく、体質や方法、方向までにも影響する。
時間が過ぎていくに従って、社会や市場の動向が変化していく。

市場変化に応じて、作り方から、作るモノを適応させていかなければならない。
適応のための全ての試みが適切であるとは限らない。
失敗も当然の如く起こりえる。
失敗を失敗として放置すれば、失敗からの損失は広がっていく。
失敗をカバーし、失敗を知識に変えて、次へのステップを作り出していかねばならない。
知識を中心にした、思考が要求され、試みられる。
これらの行為の一つの方法として、PDCAなどが存在する。
PDCAは考え方とプロセスを示す。
これも知識である。
Planを間違えば、アクションは起こせない。
Planのための前提があり、アプローチがある。
これらの思考は知識から始まる。

OffJTで得た知識が、OJTで活かされて、育成が進む。
仕事は失敗と成功の組み合わせで、精度が上がり、新知識、技術が組み入れられる。

これら自体が人材育成と直結している。
失敗と成功の組み合わせは、まさしく実験の場なのだ。
実験の成功が、次の仕事を成功させる。

OJTの枠組みを広げなければならない。
テイラーシステムの導入は十分に済んだ。

知識と思考を職場で活用し、その是非を確認しながら育成していく姿勢こそ人材育成である。
方法の伝達は大切であるが、前に進まねばならない。
失敗を失敗として成功に変えていかねばならない。
PDCAのCを明確にしていかねばならない。
業務にプロセスでうまれた副産物を取り入れていかねばならない。

活動成果を明らかにする。
失敗を成功につなげる。
副産物を明らかにする。
評価を歴然と見せるようにする。

これらを通してOJTとなる。
トップリーダーは、日々OJTを実施している。
トップの場合は、直接の指導者はいない。
指導者は顧客であり、市場の評価である。
組織自体の指導者が顧客である。
だが、解はない。
解は自身の中にある。

組織の活動自体が、実験と教育の道場なのだ。



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